【あらすじ・感想】80歳のスパイス屋さんが伝えたい人生で大切なこと 吉山 武子著

80歳のスパイス屋さんが伝えたい人生で大切なことのアイキャッチ画像 小説・エッセイ

タイトルと表紙に惹かれ手に取りました。スパイス料理にも関心があったので拝読しました。

著者吉山 武子
出版社株式会社KADOKAWA
出版年2022年8月 初版発行
その他著者は「TAKECO1982」の主宰

著者 吉山 武子さんについて

1942年生まれで、スパイスブレンダーでありスパイス料理研究家。夫の介護をしながら福岡県久留米市のスパイス専門店「TAKECO1982」も主宰する。
40歳でスパイスカレーに出会って以来、スパイス料理を学び、料理教室などを通じてスパイス料理を広める活動に努めてきた。

あらすじ

スパイス料理研究家である吉山さんが大切にしている暮らし方や食生活を、ご自身の半生を振り返りながら伝えてくれている一冊です。

家庭料理は家族への愛を伝えるものであり、スパイスはそんな料理の手助けをしてくれる食材であることを伝えてくれています。

吉山さんは40歳の時にスパイスカレーに出会い、その魅力に衝撃を受け、スパイス料理の勉強を始めます。そしてスパイスブレンダーという肩書きで移動教室や自宅などでスパイス料理教室を開催し、スパイスの魅力を広める活動を始めます。

さらに73歳の時には夫の介護をしながらも、長年の夢であったスパイス専門店「TAKECO1982」をオープンします。

「TAKECO1982」をオープンした後、80歳で本書を出版した現在でも挑戦したいことが次々とあり、意欲的な吉山さんの姿に元気づけられます!

スパイス初心者でも手軽に使えるスパイスレシピも紹介してくれています。

内容の詳細と感想

sachi
sachi

上記の概要より本の内容に踏み込んでいます。
これ以上内容を知りたくない方は次の章までスキップしてください!

元気と愛情に溢れる吉山さんの魅力が詰まった一冊

冒頭では下記の4つのメッセージが綴られています。

  1. スパイスが人生を豊かにする
  2. 73歳で始めたお店は吉山さんの生きがい
  3. 周りの人に支えられて生きている
  4. 家庭料理の大切さを伝えていきたい

これらのメッセージはこれから語られる吉山さんが大切にされてきたことや築き上げてきたものへの想いをギュッとまとめてくれています。このメッセージでグッと吉山さんへの関心が湧き上がります。
また、本書を読み終えた後、改めてこのメッセージに込められてた思いを強く感じました。

Chapter1は80歳現在の吉山さんの日々のルーティンや考えこだわりについて語られています。

吉山さんは、スパイスとともにハーブも日々の暮らしに取り入れられており、就寝前にはラベンダーのミストを撒くなど、スパイスやハーブが生活に根付いていることがよく分かります。

スパイスと聞くと、カレーなど比較的辛い料理に使われがちな印象ですが、吉山さんは肉じゃがや味噌汁、ご飯を炊くときなど、日本の家庭料理に使っています。
この、さりげなく普段の料理に使う様子から、私自身も手軽に使えそうな気がし、スパイスを普段の料理にプラスしてみたくなりました。

私は幼い頃から祖母の手料理で育ち、子どもができた今は手料理や使う食材に気を遣っています。
吉山さんが家族や周りの人への思いを込めて料理をされている様子から、祖母の手料理やその料理を囲む食卓を思い出し、とても懐かしく思いました。

吉山さんは忙しくても特に手料理、家庭料理へこだわりを持っておられ、普段の暮らしのこだわりや手料理への想いには共感する部分が多々あり、何度も頷き同意しながら読み進めました。

Chapter2では、誕生から結婚、スパイスとの出会いや料理教室を始めるようになるまでの過程が語られています。

40歳の時にスパイスと出会い、スパイスの魅力に魅了された吉山さんは、夜間の料理教室などに通い、スパイス料理を学びます。

そしてスパイスブレンダーの肩書きを名のり、料理教室などを通じてスパイスの魅力を広める活動を始めます。料理教室は自宅を使用するだけではなく、車で開催地まで赴く移動教室も実施します。特にこの移動教室については、夫の進夫さんが運転をしてくれるなど、進夫さんの協力的で理解のある姿がとても印象的です。

Chapter3は主にスパイス専門店「TAKECO1982」をオープンするまでのお話です。

体力が持たなくなってきた吉山さんは料理教室引退します。そんな吉山さんに姪のみどりさんが、吉山さんの長年の夢であった専門店をオープンすることを提案します。

初め吉山さんはこの提案には消極的でしたが、みどりさんに説得され、73歳の時に「TAKECO1982」をオープンします。1982年はスパイスブレンダーとして活動を開始した年にちなんでつけられた名前です。

この章では「TAKECO1982」のコンセプトやこだわりが語られています。

みどりさんは幼少期から吉山さんの手料理をよく口にしており、みどりさん自身も食材にこだわったオーガニック食材専門店を経営されています。

みどりさんのプロデュースの元、「TAKECO1982」が出来上がっていく様子はとてもワクワクしました。

「TAKECO1982」においても、自分の子どもに食べさせたいかどうかで食材を選定しており、吉山さんとみどりさんらしいこだわりの強さを感じました。

Chapter4では、「TAKECO1982」オープン後の活動や80歳現在の吉山さんの新たな挑戦に向けた思いが語られています。

吉山さんは大人向けの料理教室だけではなく子ども向けの教室も開催されており、「食育」に対する強い思いが伺えました。

また、店の経営や料理教室だけに留まらず、今後はYouTubeでレシピを紹介するYouTuberの夢もあるそうです!

本書で登場する吉山さんのスパイス料理はとても美味しそうで、今からこのYouTubeが楽しみです!

吉山さんの何歳になっても新しいことに挑戦しようとする姿にやる気をもらえる一冊です。

印象に残った箇所(引用抜粋)

冒頭のメッセージ「家庭料理の大切さを伝えていきたい」で印象に残った文章がこちらです。

夫の介護をしていてつくづく感じるのは、「介護は愛がないとできない」ということです。義務感だけでできるようなことではありません。
料理も同じだと思います。家族への愛がなければ、頑張れません。
今のお母さんたちはとても忙しいですね。一日働いたあとで手の込んだ料理を作るなんて無理だと思います。
冷凍食品や、できあいの惣菜や、外食に頼ってしまうのもしょうがないこと。
でもそればかりになると、家族は体も心も満たされません。

(中略)

家庭料理は、「大切に思っているよ」という気持ちを家族に伝えるもの。
「食事を作る」という素晴らしい仕事に、もっと誇りを持ってほしいです。

(単行本 p.11)

私は働きながら子育てをしており、なるべく手料理を心がけているので、特に最後の「食事を作る」ということが素晴らしい仕事であり、誇りを持ってほしいというメッセージにはとても励まされ元気付けられました。

Chapter3で「食べる」ことの大切さや口にするものの大切さが語られている場面で印象に残った文章がこちらです。

だからね、お父さんお母さんたちは、子どもに清涼飲料水を飲ませすぎないでください。甘いものや添加物の多いものを、どうか食べさせすぎないでください。

子どものころに口にしたものは、舌が覚えています。子どものころに食べてきたものが、その人の人生をつくるもとになるのです。

(単行本 p.111)

このメッセージは吉山さんの手料理を幼い頃から口にしてきた姪のみどりさんの感受性が豊かである所以は子どもの頃に体験し触れてきたものであるというエピソードの最後に綴られています。

特に幼い時期の子どもは食べるものを自分で選ぶことはできないので、親である私の行動が良くも悪くもその後の子どもの人生に影響することを改めて認識させられました。

思わず笑ってしまった文章がこちらです。

夫の愚痴を言う暇があったらたまねぎを炒めて

(単行本 p.163)

吉山さんは現在、認知症の進夫さんをとても献身的に介護されています。一方の進夫さんも吉山さんのスパイスブレンダーとしての活動をずっと応援し支えてくれていました。喧嘩をすることもあるそうですが、その日のうちに仲直りするそうです。吉山さんは縁あって一緒になった相手なのだから、陰で愚痴を言うことや、ましてや子どもの前で悪口をいうことは信じられない行為だとお考えです。他人のそのような行為を見ていると、そんな暇があるなら玉ねぎでも炒めていれば良いのにと思われるそうで、「玉ねぎでも炒めて」という部分は本当に吉山さんらしい表現だと思い、思わず笑ってしまいました。

しかし、吉山さんの言うとおり、不満はあれどもお互いをリスペクトし合うことは本当に大切だと思います。私もつい夫にイライラしてしまうことがありますが一呼吸おいて言い方に気をつけようと思いました。

まとめ おすすめしたい人

本書をおすすめしたい人の主な特徴を3つまとめてみました!

おすすめポイント① スパイス料理に挑戦してみたい人

まずは、なんといっても本書はスパイス料理に精通した吉山さんの著書です。吉山さんのスパイスに対する愛が溢れ出ており、読者もスパイスの魅力に魅了されます。

スパイスは吉山さんの暮らしに本当に馴染んでおり、その様子からスパイス料理に対するハードルが下がり、挑戦してみようと思えます。
本の中で都度レシピを紹介してくれていたり、著書の最後でもレシピ集があるのでぜひ一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか!

おすすめポイント② 新しいことに挑戦したいけど行動できていない人

スパイス料理以外でも何か新しいことにチャレンジしたい人にぜひ読んでいただきたい一冊です。

吉山さんは40歳でスパイス料理の勉強を始め、73歳でスパイス専門店をオープンします。さらに80歳で書籍を出版し、YouTuberになる夢も抱いています。

吉山さんのこれまでの挑戦は、新たなことを始めるのに年齢は関係ないことを証明してくれています。
読者の挑戦に背中を押してくれる一冊です。

おすすめポイント③ 忙しくて余裕を持って料理や家事ができていない人

家庭料理にこだわりがあり手料理を大切にされている方はもちろんですが、それと同時にぜひ読んでいただきたいのが、忙しい方々です。

吉山さんが家庭料理にこだわるのは、自分を含めた家族の心と体の健康を想ってこそだからです。
そのため、忙しいからこそ少し立ち止まって読んでほしい一冊です。本書を読むことで大切な家族や自分の健康に向き合ってみてはいかがでしょうか。

以上、ぜひ次の一冊の参考にして頂ければ幸いです!

また、機会があればぜひ、吉山さんが主催するスパイス専門店「TAKECO1982」へも訪れてみてはいかがでしょうか!

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